印刷会社で働きはじめたころ、先輩から「鉄筆でスジ入れといて」と言われ、頭が真っ白になったことがあります。スジ入れとは、紙をきれいに折るための折り目の溝を付けること。当時のわたしは、その言葉すら知りませんでした。
あとから分かったことですが、このときの指示は「ダミー(束見本)用に数枚だけ」という意味でした。本番の折り筋は機械で加工するもので、鉄筆はあくまでその手前の確認作業のための道具だったのです。
同じように戸惑っている方へ、わたしなりに整理してみました。この記事で取り上げる鉄筆の使い方は、次の3つです。
- ①スジ入れ(ダミー製作)……ダミーや少部数の手直しで厚紙に折り筋を付け、カンプや束見本に仕上げる
- ②トレース・転写……物理的な検証の場面で、当たりを写す
- ③色鉛筆画の白線……凹みで白い線を浮かべる
■ 鉄筆ってどんな道具?
◆ ガリ版の時代から続く道具
鉄筆は、金属の先で表面に跡を付ける道具です。もともとは謄写版——いわゆる「ガリ版」という昔の簡易印刷で使われていました。ロウを塗った薄い原紙を鉄筆で引っかいて細かな穴をあけ、その穴からインクをにじませて紙に写す、という仕組みです。原稿の文字や線は、この鉄筆で一字ずつ刻んでいたのだそう。
インクを出すのではなく「跡を付ける」ことが役目、というのが鉛筆やペンとの大きな違いなのです。
◆ 見分けるポイントは先の形
英語圏では stylus(エンボッシングツール/トレーサー)と呼ばれるものが近い道具にあたります。ただし stylus は用途の広い語で、スマホやタブレットのタッチペンから粘土用のヘラまで幅広く含みます。ここでいう鉄筆に相当する場面もある、という程度に捉えておくのがよさそうです。現在は「スタイラス」というとタッチペンを指すことも多いため、購入時は「エンボス用」「トレース用」など用途の表記を確認すると安心です。
インクの出なくなったボールペンと似ていますが、鉄筆は先端が滑らかな球状に磨かれているため、適切な筆圧と紙であれば、破らずに凹みだけを残しやすいのが特徴です。とはいえ絶対に破れないわけではなく、先端の径・筆圧・紙質しだいでは簡単に穴があきます。とくに上質紙55kg以下の薄物やトレーシングペーパーのような薄い紙は破れやすいので、力加減にはくれぐれも気をつけてください。
また、どんな紙でも同じように使えるわけではありません。上質紙や板紙のように表面が素のままの紙なら凹みだけをきれいに残せますが、コート紙やマットコート紙、PP貼り、ニス引き、箔押しの面ではこすれて艶ムラや白ヌケ(銀ムラ)、加工の剥がれが出ることがあります。
使う前には必ず同じ銘柄・同じ加工の端材でテストして、跡の付き方を確かめておくと安心です。

■ 現場とデザイン事務所、3つの出番
鉄筆の使い道は、大きく分けて「①スジ入れ(ダミー製作)」「②トレース・転写(当たり=下描きの位置決めの線。それを写す作業のこと)」「③色鉛筆画の白線」の3つ。それぞれ向く紙も注意点も違うので、順番に見ていきます。
◆ ①スジ入れ(ダミー製作)──折り筋を付けて、実寸で組む
厚紙に折り筋を付ける
わたしの職場では、厚紙に折り筋を付けるスジ入れでよく登場します。なお、スジ入れは会社によって筋押し・クリース・押し罫とも呼ばれ、指示書では表記を相手に合わせると誤解が減ります。
ただ、ここは最初にはっきり切り分けておきたいところです。量産品の折り筋は、筋押し機(スジ入れ機)や折り機に付いたクリーサー、あるいは押し罫を仕込んだ活版機・トムソン(ダイカット)での機械加工が原則。位置も圧も一定にそろうので、手作業とは仕上がりの安定度がまるで違います。
いっぽう鉄筆を使うのは、ダミー(束見本)の作成、社内校正、数部だけの手直し、折り位置の確認といった限定的な場面だけ。本番の刷り本を手作業でスジ入れするものではない、と最初に教わりました。機械加工の工程を手作業に置き換えてしまうと、割れやズレが部数分そのまま事故になります。デザイン事務所でのカンプづくりも、この「限定的な場面」の代表例です(詳しくは後述の「カンプ・ダミーを実寸で組む」で説明します)。
そのうえで、実際に手を動かすときは向きに気をつけてください。スジは折り山の内側になる面(谷になる側)から入れ、外側がゆるやかに凸へ張り出すようにします。逆向きに入れると外側の繊維が引っ張られて、折ったときに割れやすくなってしまいます。
それから紙目も見落とせません。紙には繊維の流れる方向があり、紙の長辺に平行な流れをT目(縦目)、短辺に平行な流れをY目(横目)と呼びます。折り線は紙目に平行になるように取るのが原則で、紙目に逆らって折ると繊維を断ち切る形になり、割れや背割れが起きやすくなります。とくに厚紙は、紙目に逆らうとほぼ確実に割れると思っておいたほうが安全です。できるだけ紙目に沿う方向で折れるよう、面付けや紙の指定の段階で考えておくと安心です。
紙目の確認は、用紙メーカーの銘柄表記(例:「四六判 135kg T目」)を見るのがいちばん確実です。表記が手元にないときは、紙を縦・横それぞれの方向に軽く曲げてみて、抵抗が小さくしなやかに曲がるほうが紙目に平行な方向。細長く裂いたときにまっすぐ裂ける方向、湿らせたときに反りの出る向き(紙目と直交する方向に伸びます)も判断材料になります。
そして、厚紙やコート紙はそもそも割れやすい紙だと覚えておいてください。四六判135kg以上のコート紙などは、スジを入れても折り山の塗工層が割れて白い筋(ヒビ)が出ることがあります。紙が厚いほどスジの幅(罫幅)も必要になり、紙目に沿っていても油断はできません。本番と同じ銘柄・同じ厚さ・同じ加工の端材で試し折りを必ず行い、割れ具合を確かめてから進めるようにしています。
印刷方式と表面加工で、折り適性は変わる
もうひとつ見落としやすいのが、紙そのものより「表面に何が乗っているか」です。同じ銘柄・同じ厚さでも、オフセット印刷の刷り本と、トナーで定着させたオンデマンド出力、PP貼りやニス引き・箔押しを施した面とでは、折ったときの割れ方がまるで違います。おおまかな目安は次のとおりです。
| 印刷・加工 | 折り部の割れやすさ | 鉄筆(手作業)の可否 | 押す向き・対処 |
|---|---|---|---|
| オフセット/塗工なし(上質紙・板紙) | 低い | ダミー・数部なら可 | 谷になる側から。基本どおりで問題が出にくい |
| オフセット/コート紙・厚手 | 中〜高(塗工層のヒビ) | 端材で試し折りをしてから | 谷になる側から、罫幅を広めに。厚紙は機械加工が安全 |
| オンデマンド(トナー) | 高い(トナー層が割れて剥がれる) | 原則不可 | 筋押し機での押し罫を前提に。やむを得ず手作業なら外面(山になる側)から押し、外側が伸びないようにする |
| PP貼り・ニス引き・箔押し | 高い(膜の割れ・剥離) | 不可 | 筋押し機やトムソンの押し罫で。加工前にスジを入れる工程順も検討する |
ポイントは、トナー印刷やPP貼り・箔押しの面は、折り部でトナーや加工膜そのものが割れるということ。紙は無事でも、表面の層だけが白く裂けたり浮いたりします。これは鉄筆で筋を一本引いたくらいでは防げないので、はじめから筋押し機での加工を前提に段取りを組んでおくのが確実です。
押す向きも、素の紙とは考え方が変わります。塗工のない紙なら谷になる側から押して外側をゆるやかに凸にするのが基本ですが、トナーや加工膜が外側(山になる側)に来る折りでは、その外面が引き伸ばされて割れます。機械では外面側から押し罫を当てて膜の伸びを抑える段取りを取ることがあり、手元で確認するときも同じ考え方で、押す向きを変えたサンプルを両方つくって比べてみてください。
どうしても判断がつかないときは、必ず同じ紙・同じ印刷条件・同じ表面加工の端材で試し折りをして、割れ具合を確かめてから本番に進んでください。
そして印刷所へ折りの指定を伝えるときは、手で折ったサンプルを渡すのではなく、データ上の折りトンボと折り指示書、それに台割で伝えるのが筋道です。
制作側で手を動かして確かめることと、印刷側へ指示として渡すことは別物、と分けて考えると混乱しにくいと思います。
向く紙/向かない紙:板紙や厚手の上質紙といった塗工のない紙は跡がきれいに残り、コート紙やPP貼り・ニス引き・箔押しの面、トナー印刷のベタ面、薄い紙は艶ムラや割れが出るので向きません。
注意点:スジは原則として谷になる側から入れ、折り線は紙目に平行に取ること。厚紙やコート紙は端材で試し折りをして割れを確認すること。トナー印刷やPP貼り・箔押しの面は表面の層が割れるので、鉄筆の手作業ではなく筋押し機での加工を前提にすること。そして量産の折り筋は筋押し機やトムソンなどの機械加工に任せ、鉄筆はダミー・束見本・社内校正・数部の手直しまでにとどめること。
カンプ・ダミーを実寸で組む
デザイン事務所での鉄筆の出番は、なんといってもカンプづくりでしょう。パッケージの箱や冊子を実寸で組み立て、クライアント提示用のダミーに仕上げる——この場面がいちばん実務的だと思います。画面の中では判断しきれない「持ったときの大きさ」「厚みの感じ」「開いたときの見え方」は、実物を組んでみないと分からないからです。
手順はシンプルです。展開図を原寸でプリントし、外周をカッターで抜く。折り位置に金属定規を当て、鉄筆で一定の力でスジを入れる。あとは山折り・谷折りの向きに沿って折り、両面テープで貼り合わせる。冊子なら、本文用紙と表紙を実際の枚数ぶん重ねて束見本にすれば、背の厚み(束)まで確かめられます。
気をつけたいのは、カンプ用のプリントがたいていオンデマンド(トナー)出力だということ。ベタ面はほぼ確実に割れるので、折り位置にベタが来る設計なら、外面(山になる側)から押してみる、折り位置のベタをあらかじめ避ける、色付きのカンプとは別に無地の白ダミーを組んで形状の確認用にする——といった逃げ道を用意しておくと安心です。
そしてもうひとつ、ここではっきりさせておきたいのが、制作側のダミーと、印刷側の量産加工はまったく別物だということです。ダミーは「形・寸法・厚み・折りの向き」を自分で確かめ、相手に見せるための試作品。いっぽう量産の折り筋は、押し罫を仕込んだトムソンや筋押し機で、紙に合わせて圧も罫幅も設定して付けられます。仕組みが違うので、ダミーできれいに折れたからといって本番も割れない保証にはならず、逆にダミーで割れても機械の押し罫なら問題なく折れることもあるのです。
この認識の差は、意外と事故になります。「ダミーで折れたので大丈夫です」と伝えたつもりが、本番の紙は厚くて紙目も逆、しかもPP貼り——という食い違いが起きるからです。ダミーはあくまで形と寸法の確認用と割り切って、割れや強度の判断は、紙と加工を決めたうえで印刷所に相談するのが確実です。
指示の渡し方も同じ考え方で。ダミーを持参するのはイメージ共有の助けになりますが、それだけで発注が成立するわけではありません。データ上の折りトンボ、折り指示書、台割、展開図(罫線と刃の線を区別したもの)——これらを正式な指示として揃えたうえで、ダミーは補助資料として添える。そう整理しておくと、社内でも印刷所とも話が噛み合いやすくなります。
向く紙/向かない紙:白ボール紙やコートボール、厚手の上質紙など塗工の少ない紙は組み立てやすく、跡もきれいに残ります。PP貼りやトナーのベタ面は折り部で割れるので、そのまま提示用にするのは避けたいところ。本番の質感まで見せたいときは、本紙の端材で別に折りサンプルを作ってもらうのが確実です。
注意点:作業前に展開図へ山折り・谷折りを書き込み、スジは谷になる側から入れること。紙目は実際の面付けと合わせて考えること。そして、ダミーの出来を量産の保証と受け取られないよう、提示のときに「形と寸法の確認用です」と一言添えること。
◆ ②トレース・転写──物理的な検証の場面で
かつては版下にカーボン紙を挟み、鉄筆であたり(下描きの位置決めの線)を写す、という使い方もあったそうですが、いまは入稿がPDFになり、トレースといえばIllustratorの画像トレースや、下絵をレイヤーに敷いてパスを起こす作業を指すのが普通です。
鉄筆の出番として残っているのは、確認用のコピーに当たりを付けたり、束見本や現物サンプルで折り・抜きの位置を確かめたりといった、物理的な検証の場面だと考えてください。
ここで気をつけたいのが、色校正紙や本紙への扱いです。鉄筆の跡は消しゴムでは消せませんし、紙の繊維を潰してしまうので元には戻せません。
そしてトレースでは、書いている紙だけでなく下に敷いた紙にも圧が伝わって凹み跡が残る点を忘れないでください。上の紙をなぞったつもりが、下の本紙に線が写り込んでいた——というのはよくある事故です。凹んだ跡は印刷面や仕上がり面に出れば、それだけで不良になってしまいます。
回避のしかたは、大きく2つあります。ひとつは入れる場所を選ぶこと。どうしても本物に当たりが必要なときは、仕上がりに出る面ではなく裏面や捨て代——トンボの外側、断裁で落ちる部分——に入れるようにします。もうひとつは圧を逃がすこと。カーボン紙やトレーシングペーパーを一枚かませて、そちらに線を写し取れば、本紙に直接ペン先が当たらずにすみます。作業前に下敷きの構成を確かめて、圧の行き先を意識しておくと安心です。
凹んだところは光の当たり方が変わって色が違って見えることもあり、再校で初校と見比べたいときに判断の妨げになってしまいます。
制作側は「軽く当たりを付けただけ」のつもりでも、印刷側にとっては色を決めるための大切な現物。この認識の差でひやりとした場面を何度か見てきました。指示はトレーシングペーパーを重ねて書き込むか、付箋やPDFの注釈で伝えるのが安心です。
鉛筆より跡が残らず、仕上がりがきれいなことには毎回感心するのですが、使いどころを間違えないようにしたいところです。
向く紙/向かない紙:捨てても構わない確認用コピーやダミー、重ねて使うトレーシングペーパーは問題ありませんが、色校正紙と本紙には絶対に入れないこと。
注意点:一度付いた凹みは消せないので、印刷側への指示は付箋やPDFの注釈など跡の残らない方法に置き換えること。やむを得ず現物に当たりを入れる場合は、裏面や捨て代(トンボの外側・断裁で落ちる部分)にとどめ、カーボン紙やトレーシングペーパーを介して下の紙に圧が伝わらないようにすること。

◆ ③色鉛筆画の白線──凹みで白い線を浮かべる
先に鉄筆で描いておき、上から色鉛筆を重ねると、凹んだ部分だけ色が乗らず白い線が浮かび上がります。色鉛筆だけで白い線を描くのはなかなかむずかしいので、この方法を知ったときはちょっと感動しました。
手順は3ステップだけです。
- 紙に鉄筆で線を引く(何も見えない状態)……色は付かないので、紙の上には薄い溝が残るだけ。斜めから光を当てると、うっすら線が見えます。
- 上から色鉛筆を塗る……溝を横切るように、寝かせた芯で面を塗るのがコツ。芯の先を立てて強く塗ると、溝の中まで色が入ってしまいます。
- 溝に色が入らず白い線が残る……塗り重ねるほど周囲が濃くなり、白い線がくっきり浮かび上がります。
猫のヒゲなど、細部の表現にぴったり。力加減の目安は「鉛筆で濃い線を引くくらい」——ペン先が紙にすっと沈み、指先に軽い抵抗を感じる程度で十分です。紙を突き破るほど押し込む必要はありません。また、同じ力でも厚手でやわらかい紙のほうが溝が付きやすく、硬く締まった紙では少し強めが必要になります。筆圧で凹みの深さが変わるので、本番と同じ紙で試し描きをしてから入ると安心ですよ。
ただ、この技法(インプレスドライン/エンボッシング)は紙質と厚みにかなり左右されます。薄い紙だと圧が貫通して破れたり、裏面に凹みが響いて裏移りしたりするので、200g/m²前後以上の厚みがほしいところ。そのうえで、水彩紙や画用紙のように適度な厚みと柔らかさをあわせ持つ紙がいちばん向いています。逆に、ケント紙のように硬く締まった紙は表面が強い反面、押しても凹みが浅くなりやすく、色を重ねたときに白線が思ったほど浮かび上がらないことがあります。
下敷きにも気を配りたいところです。机に直置きすると圧の逃げ場がなく、凹みが浅いまま線だけがこすれてしまいます。かといってやわらかい下敷きの上で強く押すと、紙そのものが伸びて波打ってしまう。紙を数枚重ねたものやカッターマットを下に敷き、その枚数で凹みの深さを調整するのがちょうどよい落としどころです。目の粗いマットだと表面の模様を拾うことがあるので、その場合は上に紙を一、二枚かませてください。
そしてもうひとつ、一度押した線は消せません。あとから位置を直せない前提で、いきなり本番の紙に描き入れないこと。まず鉛筆で下描きをして、その上にトレーシングペーパーを重ね、紙越しに鉄筆でなぞる——という手順を踏むと、位置を確かめながら進められて失敗が減ります。
向く紙/向かない紙:200g/m²前後以上の水彩紙や画用紙など、適度な厚みと柔らかさのある紙が向きます。ケント紙のように硬く締まった紙は凹みが浅く効果が出にくく、薄い紙や表面の弱い紙は破れ・裏移りが起きるので避けます。
注意点:机に直置きせず、下に紙を数枚またはカッターマットを敷いて凹みの深さを調整すること。押した線は消せないので、鉛筆の下描き→トレーシングペーパー越しに鉄筆でなぞる、という手順で位置決めをすること。

■ 選び方と、身近な道具での代用
◆ バンコ(BANCO)などの市販品
市販品では、製図用テンプレートなどで知られるバンコ(株式会社バンコ)の鉄筆がよく知られています。大きめの文房具店や画材店の製図用品コーナー、あるいは画材の通販サイトで扱われていて、価格はおおむね数百円〜千円程度。専用品としては手に取りやすい部類だと思います。なお、メーカー名の表記ゆれ(BANCO/バンコ)や品番、先端径の数値は、購入前にメーカーの公式サイトや製品パッケージで確認しておくと確実です。
選ぶときのポイントは先端径です。0.8mm前後の細いものは細密なトレースや繊細な線に、1.5mm前後の太いものはダミーや見本作りのスジ入れに——と、数値を目安に用途で使い分けられます。
用途が定まらないうちは、両端で太さの違うタイプ(たとえば片側0.8mm・反対側1.5mmといったもの)が1本で2通り試せて、使い勝手を確かめやすいです。
◆ まずは手元にあるもので
インクの切れたボールペンなどでも代用はできますが、選ぶ基準をはっきりさせておくと失敗が減ります。
目安は、先端が0.5〜1mm程度の球状であること。これより細かったり、目打ち(手芸や製本で穴をあけるときに使う、千枚通しのような先のとがった道具)の先やカッターの背のように尖っていたりするものは、圧が一点に集中して紙の繊維を切ってしまうので使わないでください。なお、目打ちの背(柄の反対側)を代用にする話も聞きますが、こちらは製品によって先端の形がまちまちで、丸く落としてあるものもあれば、平らに切りっぱなしで角が立っているものもあります。見た目だけで判断せず、指先でなぞって丸みと引っかかりを確かめてから使うかどうかを決めてください。
そしていちばん気をつけたいのが、インク汚れです。ボールペンは「インクが切れた」と思っていても、ペン先やボールのまわりに残ったインクが紙に付着することがあり、実際いちばん多い事故がこれです。使う前に必ず不要な紙で数十センチ試し描きし、線が出ないこと・インクの汚れが付かないことを確認してから本番に入ってください。とくに油性ボールペンは温度が上がると残インクが染み出してくることがあるため、本番用途には向きません。ダミーや練習用にとどめ、色校正紙・本紙・作品用の紙には使わないのが安全です。
あわせて、先端に傷やバリがないか指先でなぞって引っかかりを確かめておくと安心です。
まずは身近な道具で試して、気に入ったら専用品をそろえる。そんな順番でも十分楽しめると思います。

■ まとめ
鉄筆は、インクを出すのではなく「跡を付ける」ための道具。それさえ押さえておけば、あとは使いどころの問題です。
出番は3つ。出番は3つあります。1つ目は、ダミーや束見本、数部の手直しのスジ入れと、パッケージや冊子を実寸で組むカンプ・ダミー製作です。量産の折り筋は筋押し機・折り機のクリーサー・トムソンなどの機械加工が原則で、とくにトナー印刷やPP貼り・箔押しの面は表面の層が割れるので機械加工が前提です。ダミーは形と寸法の確認用と割り切り、指示は折りトンボ・折り指示書・台割で伝えます。2つ目は、ダミーや確認用コピーでの当たり写しです。色校正紙と本紙には入れず、やむを得ないときは裏面や捨て代に、カーボン紙やトレーシングペーパーを介して行います。3つ目は、厚手でやわらかい紙に凹みで白線を描く色鉛筆画です。下敷きで深さを調整し、下描きとトレーシングペーパーで位置決めをします。いずれも、一度付いた跡は消せないことが共通の注意点です。
まずはインクの切れたボールペン(先端0.5〜1mmの球状のもの)を用意して、いらない厚紙で試し書きしてみてください。このとき、数十センチ描いてインク汚れが出ないことを確かめるのを忘れずに。跡の付き方の感触がつかめたら、専用品を買う判断もしやすくなります。
よくある質問
- 鉄筆とはどんな道具ですか?
-
鉄筆は、金属の先で紙などの表面に跡を付ける道具です。鉛筆やペンのようにインクや色を出すのではなく、凹みや線の跡を残すことが大きな特徴です。
- 印刷会社では鉄筆をどのように使いますか?
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印刷会社では、ダミーや束見本の作成、社内校正、数部だけの手直し、折り位置の確認などでスジ入れに使われます。ただし量産品の折り筋は、筋押し機やトムソンなどの機械加工が原則で、鉄筆は本番加工の代わりではありません。
- 鉄筆でスジ入れをするときの注意点は何ですか?
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スジは原則として谷になる側から入れ、折り線は紙目に平行に取ることが大切です。厚紙やコート紙は割れやすいため、本番と同じ銘柄・厚さ・加工の端材で試し折りをしてから進めます。
- デザイン事務所のカンプやダミー作りでは鉄筆をどう使いますか?
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展開図を原寸でプリントし、外周を切り抜いたあと、折り位置に金属定規を当てて鉄筆でスジを入れます。その後、山折り・谷折りに沿って折り、両面テープで貼り合わせることで、形や寸法、厚みを確認するダミーを作れます。
- 鉄筆でトレースや転写をするときに気をつけることはありますか?
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鉄筆の跡は消しゴムでは消せず、紙の繊維を潰すため元には戻せません。色校正紙や本紙には入れず、必要な場合も裏面や捨て代にとどめ、トレーシングペーパーやカーボン紙を介して圧が下の紙に伝わらないようにします。
- 色鉛筆画で鉄筆はどのように使えますか?
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先に鉄筆で紙に線を引き、その上から色鉛筆を塗ると、凹んだ部分に色が乗らず白い線として浮かび上がります。猫のヒゲのような細い白線表現に向いており、本番前に同じ紙で試し描きをして力加減を確認すると安心です。
- 鉄筆の代わりになるものはありますか?
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インクの切れたボールペンなどでも代用できますが、先端が0.5〜1mm程度の球状であることが目安です。使う前には不要な紙で数十センチ試し描きし、インク汚れが出ないことや先端に傷・バリがないことを確認します。
- 鉄筆はどこで買えますか?選ぶポイントはありますか?
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市販品ではバンコの鉄筆などが知られており、大きめの文房具店や画材店の製図用品コーナー、画材の通販サイトで扱われています。選ぶときは先端径がポイントで、0.8mm前後は細密なトレースや繊細な線、1.5mm前後はダミーや見本作りのスジ入れに向いています。

