印刷の便利帳をはじめました。紙・印刷・加工の調べもの帳です。
印刷は、頼み方がわかりにくい。同じ紙で名刺を100枚、それだけの注文でも会社によって値段が変わります。用語を調べても、出てくるのは知っている人に向けた説明ばかり。見積もりを取ってみても、何を比べればいいのかわからない。その「わからない」を少しずつ減らすために、このサイトを作りました。
刷る仕事は、ずっと人の手の中にあった
この記事の見出しに置いたのは、歌川国貞(三代豊国)が安政4年(1857年)に描いた『今様見立士農工商之内 職人』という三枚続の錦絵です。版木を彫る人、鑿と木槌で余白を削る人、紙に礬水を引いて干す人、大きなバレンを傍らに休む摺師。錦絵が一枚できるまでの工程が、横に並んでいます。
ただし、これは記録画ではありません。彫師も摺師もすべて女性に置き換えた「見立て」、つまり当時のパロディです。実際の工房の様子として眺めると、事実を取り違えます。それでも工程の順番は正確で、何がどういう順で進むのかは、この一枚でだいたいわかります。
同じころ、海の向こうでも似たことが起きていました。銅の板を彫り、インクを詰め、プレスに通し、刷り上がった紙を天井から吊るして乾かす。

道具も言葉も違いますが、やっていることは驚くほど似ています。版をつくり、インクをのせ、紙に写し、乾かす。

機械は速くなり、版はデータになりました。それでも、版をつくって紙に写すという骨格は変わっていません。だから、いま印刷を頼むときに出てくる言葉の多くは、この絵のなかの作業から来ています。版、刷り、摺り、彫り。もとはどれも、人の手の動きを指す言葉でした。
用語がわかりにくいのは、たぶんそのせいです。現場では毎日使うので説明する必要がなく、外から来た人に向けて言い直されないまま残ってきました。ここでは、その言い直しをやります。
いま置いてあるもの
計算ツール。背幅、連量と坪量、紙の厚み、印刷物の重さ。刷る前に必要になる数字を、その場で出せます。使っている値は、製紙メーカーと紙商の公表データを突き合わせたものです。「コート90kgは1平方メートルあたり何グラムか」「この冊子の背は何ミリか」「チラシ2,000枚は何キロで、ダンボール何箱になるか」。電卓と早見表を行き来する時間を、ここで省いてください。
記事。トンボと塗り足し、リッチブラックとスミベタ、コート紙とマットコート紙、ルビ、束見本。入稿の前でつまずきやすいところから書いています。どれも、うちが実際に問い合わせを受けたことのある内容です。
動画で見る印刷。読むより見たほうが早いことは、動画に任せました。置いているのは、最後まで見て内容を確かめたものだけです。博物館や大学が公開しているものを中心に選んでいます。
これから置くもの
印刷用語辞典「印刷とは。」と、用紙銘柄図鑑。それから、価格の比べ方。
辞典は、いま材料を集めているところです。同じ言葉を各社がどう説明しているかを読み比べて、複数のソースで一致した事実だけを取り出し、文章はゼロから書き起こす。手間のかかるやり方ですが、どこかの用語集の言い換えを並べても意味がないので、この順番でやります。
用紙図鑑は、銘柄ごとに実物を刷って、撮って、測ります。カタログの数字を写すだけなら、すでにメーカーのサイトにあります。
どうやって調べているか
値段や納期の話は、カタログを読み比べるだけでは書けません。同じ仕様で実際に発注し、届いたものを並べて確かめています。刷り色、紙の質、断裁の精度、梱包の状態、そして何日で届いたか。
そのうえで、確認した日付と、確認した人の名前を記事に添えます。価格も仕様も変わるものなので、いつ時点の話なのかがわからない記事は、あとで読む人の役に立たないからです。
運営しているのは
静岡の印刷会社です。1955年の創業から、チラシ・冊子・名刺・伝票を刷ってきました。現場で毎日出てくる「これは何ミリか」「この紙は何グラムか」という問いに、そのつど電卓と早見表で答えてきました。その答えを、外に開くことにしました。
運営元は印刷業を営んでいます。つまり、このサイトで比較の対象になる事業者の一社です。都合よく書かないために、価格や納期は実際に発注した記録だけを載せ、比較の対象からも運営元を外していません。書けないことは書けないと記します。この考え方と運営者の情報はこのサイトについてにまとめました。
あわせてお伝えしておくと、運営元は名前入りのオーダーメイド絵本マイステラも運営しています。このサイトの下部にバナーを出しているのはそのためです。関係のある事業者の広告だと分かるようにしておきたいので、先に書いておきます。
まだ始めたばかりで、空いている棚のほうが多い状態です。少しずつ埋めていきます。「こういうことが知りたい」「ここが間違っている」がありましたら、お問い合わせからお寄せください。現場の人間が読みます。
図版の出典
- 見出し画像:歌川国貞(三代歌川豊国)『今様見立士農工商之内 職人』安政4年(1857年)(東京都江戸東京博物館)出典:Tokyo Museum Collection/パブリックドメイン
- ヤン・ライケン『銅版印刷工(Plaatdrukker)』1694年、連作『人間の職業』より(アムステルダム国立美術館 RP-P-OB-44.518)/パブリックドメイン
- ペッレグリーノ・ダル・コッレ『版画工房(The Printmaking Workshop)』1750〜1800年(メトロポリタン美術館 2013.223)/Open Access・CC0

