印刷物を発注するときに、「コート紙」と「マットコート紙」のどちらを選べばいいのか迷ったことはありませんか。
わたしも以前、はじめてチラシを作ろうとしたとき、用紙の違いがよくわからず困った経験があります。見た目は似ているようで、実際に印刷してみると仕上がりの印象がずいぶん変わるのです。
この記事では、コート紙とマットコート紙の違いを「質感」「発色」「用途」の3つの視点から解説します。代表的な印刷用紙のツヤを比較した表も載せていますので、用紙選びの参考にしていただけたらうれしいです。
コート紙とマットコート紙の違いを質感・発色・用途で比較
まずは、コート紙とマットコート紙の基本的な違いを見ていきましょう。
どちらも「塗工紙」と呼ばれる種類の紙で、紙の表面に顔料などを含む塗工剤を塗り、滑らかに仕上げています。塗工後のカレンダー加工(ロールで圧力をかけて平滑にする処理)の有無や強弱によって、光沢のあるコート紙と、光沢を抑えたマットコート紙に分かれるのです。
質感の違い:光沢のあるコート紙、しっとりツヤ消しのマットコート紙
両者の違いをまとめると、以下のようになります。
| 項目 | コート紙 | マットコート紙 |
|---|---|---|
| 表面の質感 | つるりとした滑らかさ | さらさらとした落ち着き |
| 光沢 | 適度なツヤがある | 光沢を抑えた仕上がり |
| 触った印象 | なめらかで冷たい感じ | 紙の肌ざわりを感じる |
| 書き込み | 鉛筆やボールペンが滑りやすい | 筆記しやすい |
この質感の違いは、カレンダー加工の強さによって生まれます。コート紙はロールで強く圧力をかけることで表面を鏡のように平滑にするため、つややかな光沢が生まれます。一方、マットコート紙はこの加工を弱めたり省いたりすることで、表面に細かな凹凸を残し、光沢を抑えているのです。
実務上、コート紙は指紋や皮脂の跡が目立ちやすく、扱いに少し注意が必要です。展示会で配布する資料など、多くの人の手に渡る印刷物では、マットコート紙のほうが汚れが目立ちにくく扱いやすいこともあります。
また、書き込みが必要な印刷物では、マットコート紙のほうがインクの乗りがよく、文字が書きやすい傾向があります。アンケート用紙や申込書など、記入欄のある印刷物にはマットコート紙が選ばれることが多いのです。
発色の違い:鮮やか重視か、落ち着き重視か
発色の違いも、表面の平滑性が大きく影響しています。
| 項目 | コート紙 | マットコート紙 |
|---|---|---|
| 発色の傾向 | 鮮やかで明るい | 落ち着いた上品な色味 |
| 光の反射 | 強い(写真が映り込む) | 弱い(目に優しい) |
| インクの乾燥 | やや遅い | やや早い |
コート紙は表面が滑らかなので、インクが紙の繊維に沈み込みにくく、色がはっきりと出る傾向があります。ただし、インクが乾きにくいため、印刷直後の積み重ねには注意が必要です。急ぎの納品では、乾燥時間を考慮したスケジュールを組むことが大切です。
マットコート紙は、表面の細かな凹凸がインクを適度に吸収するため、発色はやや抑えられますが、その分乾燥が早く、印刷後の加工もスムーズに進められます。派手さよりも上品さを求めるデザインや、文字を読みやすくしたい冊子には、このマットな質感が合うことが多いです。
なお、価格についてよく質問をいただきます。コート紙とマットコート紙の価格差は、実はそれほど大きくありません。同じ厚みであれば、ほぼ同程度の価格帯であることが多いです。

代表的な印刷用紙のツヤを星付きで比較
コート紙とマットコート紙の違いがわかったところで、ほかの印刷用紙とも比較してみましょう。ツヤの強さを星の数で表してみました。
1位:キャストコート紙(ミラーコート紙)|鏡のような強い光沢
光沢:★★★★★
キャストコート紙は、特殊な加工で鏡のように強い光沢を出した用紙です。ミラーコート紙とも呼ばれます。高級感のあるパッケージやラベル、商品タグなどに使われることが多い紙です。
一般的なコート紙とは製造方法が異なり、鏡のように磨かれた金属ドラムに湿った塗工面を密着させて乾燥させることで、ドラムの平滑面が紙に転写され、鏡のような光沢が生まれます。
2位:アート紙・アートポスト紙|滑らかで深みのある光沢
光沢:★★★★☆
アート紙は、コート紙よりも多くの塗工剤を使い、滑らかで深みのある光沢を持つ用紙です。写真集や美術系の印刷物、高級なカタログなどに使われます。
厚手のものは「アートポスト紙」と呼ばれ、名刺やポストカードの台紙として選ばれることもあります。
3位:コート紙|チラシでよく見る標準的なツヤ
光沢:★★★☆☆
コート紙は、印刷業界でもっとも広く使われている塗工紙のひとつです。チラシ、パンフレット、カタログなど、カラー印刷が必要な場面で活躍します。
厚みの種類も豊富で、薄手のものは折込チラシに、厚手のものは会社案内やパンフレットの表紙にと、用途に応じて選べます。
4位:マットコート紙|光沢を抑えた上品な質感
光沢:★★☆☆☆
マットコート紙は、塗工紙でありながら光沢を抑えた仕上がりが特徴です。文字の多い冊子や、落ち着いたイメージのパンフレット、書籍の本文用紙などに使われます。
マット紙と呼ばれることもありますが、印刷会社によって呼び方が異なる場合があるので、発注時には確認しておくと安心です。
5位:上質紙|ツヤのない自然な紙の質感
光沢:★☆☆☆☆
上質紙は、塗工剤を塗っていない非塗工紙です。コピー用紙と似た、ツヤのない自然な紙の質感を持っています。
書籍の本文や、筆記を前提としたノート、申請書類など、文字を読んだり書いたりする用途に向いています。写真印刷にはあまり適しませんが、素朴な風合いを活かしたデザインでは選ばれることもあります。
厚手の用紙では呼び方が変わる?紙の名称に関する注意点
印刷用紙には、同じ種類でも厚みによって名称が変わることがあります。たとえば、厚手のコート紙は「コートカード」や「コートボール」と呼ばれることがあります。
また、厚みの表記方法も「kg」「mm」「連量」などいくつかあり、慣れないうちは戸惑うかもしれません。用紙の厚みについて不安があれば、印刷会社に相談して実際のサンプルを見せてもらうのが確実です。

印刷物の用途別おすすめ用紙の使い分け
では、実際にどのような印刷物にどの用紙を選べばいいのでしょうか。用途別の使い分けを見ていきましょう。
写真や色彩重視の印刷物にはコート紙系
写真やカラーイラストを目立たせたい印刷物には、コート紙やアート紙がおすすめです。
- 商品カタログ(写真を美しく見せたい場合)
- 折込チラシ(セール情報などを鮮やかに伝えたい場合)
- ポスター(遠くからでも目を引く仕上がりにしたい場合)
- パンフレットの表紙(第一印象を華やかにしたい場合)
コート紙の光沢は、写真の色を引き立て、紙面全体を明るい印象に見せてくれます。飲食店のメニューや旅行パンフレットなど、視覚的な魅力が重要な印刷物との相性がよいです。
文字の読みやすさ重視ならマットコート紙
文字量が多い印刷物や、じっくり読んでもらいたい冊子には、マットコート紙が向いています。
- 会社案内(落ち着いた企業イメージを伝えたい場合)
- 報告書・白書(長文を読みやすくしたい場合)
- 製本を伴う冊子(ページをめくりやすくしたい場合)
- アンケート用紙(書き込みが必要な場合)
マットコート紙は光の反射が少ないので、文字を追いかけていても目が疲れにくい傾向があります。高級感のある仕上がりを求める場合にも選ばれます。
とはいえ、「写真があるからコート紙」「文字が多いからマットコート紙」と決めつける必要はありません。デザインの方向性や、読み手に与えたいイメージによって、あえて逆の選択をすることもあります。
迷ったときは、印刷会社に用紙サンプルを依頼してみてください。実際に手に取って比較すると、自分の印刷物に合う用紙がきっと見つかるはずです。

よくある質問
- コート紙とマットコート紙の質感の違いは何ですか?
-
コート紙はつるりとした滑らかさと適度なツヤがある一方、マットコート紙はさらさらとした落ち着いた質感で、光沢を抑えた仕上がりです。
- コート紙とマットコート紙の発色の違いは?
-
コート紙は表面が滑らかで色がはっきりと出るのに対して、マットコート紙は光の反射が少なく落ち着いた上品な色味が特徴です。
- どのような印刷物にコート紙を使用するべきですか?
-
写真やカラーイラストを目立たせたい印刷物にコート紙が適しています。例として商品カタログやポスター、パンフレットの表紙が挙げられます。
- マットコート紙はどのような用途に向いていますか?
-
文字量が多く、じっくり読んでもらいたい冊子や、書き込みが必要な印刷物に向いています。例えば会社案内やアンケート用紙に適しています。
- コート紙とマットコート紙の価格差は大きいですか?
-
同じ厚みのコート紙とマットコート紙の価格差はそれほど大きくなく、ほぼ同程度の価格帯であることが多いです。
- マットコート紙の利点とは何ですか?
-
マットコート紙は光の反射が少なく、目に優しく文字を読みやすいです。また、汚れが目立ちにくく、書き込みがしやすい特性があります。
- コート紙のデメリットはありますか?
-
コート紙は指紋や皮脂の跡が目立ちやすく、インクの乾燥がやや遅いため、印刷直後の扱いには注意が必要です。

