領収書や納品書、契約書の控えなどに使われるノーカーボン紙は、カーボン紙を挟まずに、筆圧だけで下の紙に文字が写る複写用紙です。「ノーカーボン」という名前の意味、複写する仕組み、上用紙・中用紙・下用紙という種類、カーボン紙との違い、プリンターやコピー機で印刷できるのか。この記事では、印刷会社の立場から、公開されている資料にもとづいて順番に整理します。
数値や仕組みの説明は出典を明記し、確認できなかった項目は「確認できず」と書きます。印刷会社としての実務の感覚は、公開資料と分けて「実務経験」と書きます。情報は2026年10月4日時点です。
ノーカーボン紙とは?「ノーカーボン」の意味
ノーカーボン紙は、圧力が加わった部分だけ色が出るように加工された複写用紙です。「ノーカーボン」とは、複写のためにカーボン紙(インクを塗った紙)を挟む必要がない、という意味です。ノンカーボン紙、ノーカーボン複写用紙、ノーカーボン用紙、複写紙などの名前で呼ばれることもあり、感圧紙とほぼ同じ意味で使われます。辞典のノーカーボン紙や感圧複写紙にも、用語としての定義をまとめています。
用途は、伝票や帳票が中心で、複写伝票を作成するときの用紙として使われます。請求書、納品書、領収書、注文書、申込書など、手書きで書いて控えも同時に残したい書類に広く使われています。

ノーカーボン紙が複写する仕組み
ノーカーボン紙は、紙の表面か裏面に、色を出すための薬剤を塗布した複写用紙です。筆圧がかかった部分だけ、薬剤が化学反応を起こして色が出ます。
マイクロカプセルと発色剤・顕色剤
富士フイルムの自社史や三菱製紙の製品資料によると、仕組みは次のとおりです。
- 発色剤:無色の染料(ロイコ染料)を油に溶かし、ごく小さなマイクロカプセルに包んだものを、上の紙の裏面に塗ります。
- 顕色剤:発色剤と反応して色を出す薬剤で、下の紙の表面に塗ります。
- 発色:ペンなどの筆圧でカプセルが壊れ、中の発色剤が出て、下の紙の顕色剤と反応して文字や線の色が出ます。
カプセルの膜の材料は、メーカーによって違います。富士フイルムの自社史にはゼラチンで包んだ微小カプセルとあり、三菱製紙の製品資料では、独自技術で開発した合成樹脂の膜とされています。
ノーカーボン紙の種類:上用紙・中用紙・下用紙
複写する枚数に合わせて、役割の違う紙を重ねて使います。包装のラベルには「上」「中」「下」の表示があるのが基本で、メーカーによってはCB・CFB・CFなどの記号が使われます。
| 種類 | 塗工している面 | 役割 |
|---|---|---|
| 上用紙 | 裏面に発色剤のカプセル | いちばん上で書く紙。書いた内容が下に写る |
| 中用紙 | 表面に顕色剤、裏面に発色剤のカプセル | 上から写され、さらに下へ写す。中用紙を増やすと複写枚数が増える |
| 下用紙 | 表面に顕色剤 | いちばん下の紙。写されるだけで、さらに下へは写さない |
中用紙は両面に塗工があるため、セットの向きが大切です。上・中・下の順に、決められた向きで重ねないと、複写が出ません。見た目や手ざわりでは区別しにくいので、ばらしてしまったときは、メーカーや紙商に見分け方を確認するのが確実です。
発色の色は、三菱製紙の一般用ではブルーとブラックがあります。控えを見分けるために、用紙そのものを白・ピンク・クリーム・アサギなどに色分けしたタイプもあります。

ノーカーボン紙とカーボン紙の違い
| ノーカーボン紙 | カーボン紙 | |
|---|---|---|
| 複写のしくみ | 筆圧でカプセルが壊れ、顕色剤と反応して発色 | インクを塗った紙を挟み、筆圧でインクを写す |
| 挟む紙 | 不要 | 必要 |
| 手や書類の汚れ | カーボン紙のようなインクの汚れはない | インクで手や書類が汚れることがある |
ノーカーボン紙は、カーボン紙を挟む手間がなく、書類や手が汚れにくいのが特長です。一方で、紙に薬剤が塗ってあるため、保管や使い方に気をつけたい点があります(後の章で整理します)。
ノーカーボン紙の使い方と用途:伝票・帳票への使用
使い方は簡単で、上用紙・中用紙・下用紙を決まった向きで重ね、いちばん上の紙にボールペンなどで筆圧をかけて書くだけです。書いた内容が、下の紙に同時に写ります。
- 伝票・帳票:請求書、納品書、領収書、注文書など。控えを同時に作れます。
- 契約書・申込書:お客様控えと会社控えを同じ内容で残せます。
- 作業日報・メモ:現場で書いて、その場で控えを渡せます。
- コンピューター出力用の帳票:ドットインパクトプリンターの印字の圧力でも複写できるため、連続伝票などにも使われてきました。
複写の濃さは、筆圧、筆記具、複写枚数、紙の厚さ、保管状態で変わります。実際に書いて、いちばん下の紙まで読めるかを確認するのが確実です。

関連:ノーカーボン紙の厚さ(N40・N60)とは
ノーカーボン紙の厚さは、N30、N40、N50、N60、N80などの区分で表されます。「N」は「ナンバー」と読みます。N40は「ナンバー40」、N60は「ナンバー60」です。数字は厚さの区分の名前で、グラム数そのものではありません。たとえば日本製紙の品質規格書では、N40の坪量は上用紙43.0g/㎡、中用紙46.5g/㎡、下用紙49.0g/㎡、紙厚は59〜62µmです。N40は、国内でもっとも多く使われている厚さとして、複数の印刷会社やコニカミノルタが紹介しています。
厚さの区分と数値の対応は、ノーカーボン紙(感圧紙)のN40とは?に詳しくまとめています。メーカーごとの数値は、図鑑の日本製紙CCP NEOやニューマイクロペーパー、三菱NCR紙スーパー、MBS感圧紙のページで確認できます。

坪量(g/㎡)と、紙の取引で使う連量(kg)の換算が必要なときは、換算ツールが使えます。


ノーカーボン紙はプリンターやコピー機で印刷できる?対応機種の確認
製品によっては、レーザープリンターやコピー機、オンデマンド印刷機で印刷できます。たとえば日本製紙のNIP-CCP(N60)は、フラッシュ定着型・加熱定着型のレーザープリンターに使えると案内されています。キヤノンも、一部のレーザービームプリンターについて、ノーカーボン用紙の用紙検証情報を公開しています。
ただし、薄い紙は機械で通しにくい場合があります。海外メーカーのLectaは、塗工層が過度の熱で劣化することがあると注意しています。使える機種かどうか、メーカーの案内や用紙検証情報の確認と、事前の試し刷りが必要です。インクジェットプリンターについては、国産品では記載を確認できませんでした。
用紙ごとの違い、機種ごとの確認ポイントは、ノーカーボン紙の印刷はレーザープリンターでできる?にまとめています。


ノーカーボン紙を使用するときの注意点と保管方法
薬剤を塗った紙であるため、使い方と保管で注意したい点があります。三菱製紙の製品資料(テクニカルガイド)と、古紙再生促進センターの規格に挙げられている内容を整理します。
- 衝撃・摩擦・重いものの接触:不意の圧力でカプセルが壊れ、意図しない発色や汚れが出ることがあります。
- 直射日光:長時間さらすと、着色したり、発色した文字が薄くなったり、発色する力が下がったりすることがあります。
- 溶剤・油脂:アルコール、トルエン、機械油などに触れると、発色する力が下がることがあります。
- ゴム・軟質塩化ビニール:長時間触れると性能が落ちることがあり、ポリエチレンやポリプロピレンのファイルが勧められています。糊、朱肉、スタンプインキ、消しゴム、セロハンテープ、蛍光ペンなどにも、発色した文字を薄くするものがあるとされています。
- 高温・高湿、積み重ねの圧:帳合後の保管で、高温・高湿の環境や過剰な積み重ねの圧により、時間がたつうちに紙面が発色することがあります。
- 古紙のリサイクル:古紙再生促進センターの古紙標準品質規格では、カーボン紙・ノーカーボン紙は、一般の古紙と混ぜて再生することができない禁忌品とされています。
複写した文字は、長期間の保存を前提にした用途では、色が薄くなる可能性があります。保存が必要な書類は、保管期間と条件を確認してください。

ノーカーボン紙の選び方と購入:サイズ・枚数・タイプ
通販の商品ページでは、A4やB5のサイズの白紙が多く、100枚、500枚、1000枚などの単位で販売されています。A4を2分割・3分割できるマイクロミシン目入りのタイプを用意している販売店もあり、A5など小さな伝票を作るときに使えます。購入前に、サイズ、枚数、上・中・下の用紙の別、厚さの区分、プリンター対応の表記を確認してください。商品ページの「対応」の表記は販売店の説明で、メーカーの適合試験の結果とは限りません。
用紙の選び方や、レーザー対応品の比較は、N40・N60の比較記事で整理しています。
ノーカーボン紙の歴史:感圧紙はいつ生まれたか
- 富士フイルムの自社史によると、米国のナショナル・キャッシュ・レジスター社が1954年に感圧紙の開発に成功しました。
- 富士フイルムは1958年1月に試作研究を始め、1963年4月に「富士フイルム感圧紙」として販売を始めました。薄い紙に水性の液を塗る技術や、マイクロカプセル化の技術が開発の課題でした。
- 同社は、発売後は複写帳票用あるいはコンピューター出力用として需要が急伸したと記しています。

印刷会社の現場から:今も紙の伝票が必要とされる理由
ここは公開資料ではなく、印刷会社としての実務経験です。領収書は、振込やカード払い、レジからの発行が増えて、紙で発行する機会は昔より減りました。それでも、領収書そのものがなくなると困るため、少ない数だけ作りたいというお客様がいらっしゃいます。また、手書きの伝票は綴じて使いやすく、あとから保管しやすい、少人数で運営している会社ではシステムに費用をかけるより紙の伝票でその場で対応するほうが楽、というお話もあります。
現場の感覚や、紙の厚さをどう選ぶかについては、複写伝票に本当に必要な精度とは?に書いています。

よくある質問
- ノーカーボン紙とカーボン紙の違いは何ですか?
-
カーボン紙は、インクを塗った紙を複写したい紙の間に挟み、筆圧でインクを写します。ノーカーボン紙は挟む紙が要らず、紙に塗ったカプセルの発色剤と、下の紙の顕色剤が反応して色が出ます。
- 「ノーカーボン」とはどういう意味ですか?
-
複写のためにカーボン紙を使う必要がない、という意味です。ノンカーボン紙、感圧紙、複写紙などとも呼ばれます。
- ノーカーボン紙の原理は何ですか?
-
上の紙の裏面に塗られたマイクロカプセルが筆圧で壊れ、中の無色の発色剤が出て、下の紙の表面にある顕色剤と反応して色が出ます。
- ノーカーボン紙はプリンターで印刷できますか?
-
製品によっては印刷できます。日本製紙のNIP-CCPのように、レーザープリンターへの対応を案内している製品があります。機種ごとのメーカー案内と、試し刷りでの確認が必要です。
- ノーカーボン紙はコピー機でも使えますか?
-
機種と用紙の組み合わせによります。コニカミノルタは、AccurioPress C4080/C14000がノーカーボン紙の需要の高いN40に対応していると案内しています。お使いの機種のメーカー案内を確認してください。
- ノーカーボン紙は何枚まで複写できますか?
-
紙の厚さ、中用紙の枚数、筆圧で変わります。通販の販売ページでは、厚口(#60)は3〜4枚複写向き、中厚口(#50)は4〜5枚複写向きと表記している例があります。販売店の目安で、メーカーの保証値ではありません。
- ノーカーボン紙の表裏はどう見分けますか?
-
包装ラベルの上・中・下の表示で確認するのが基本です。見た目では判別しにくいので、混ざったときはメーカーや紙商に確認してください。
まとめ
ノーカーボン紙は、マイクロカプセルの発色剤と顕色剤の反応を使って、カーボン紙なしで複写できる用紙です。上用紙・中用紙・下用紙を決まった向きで重ね、複写枚数に合わせて中用紙を増やします。厚さは区分で表され、N40がもっとも多く使われています。プリンターやコピー機で使うときは、機種ごとの確認が欠かせません。保管では、日光・熱・湿気・溶剤・摩擦に気をつけてください。
主な出典
- 富士フイルムのあゆみ 感圧紙の事業化
- 富士フイルムのあゆみ 感圧紙の伸長
- 日本製紙 ノーカーボン紙(製品ページ・品質規格書)
- 三菱製紙 ノーカーボン紙「三菱NCR紙スーパー」
- 三菱製紙 三菱NCR紙スーパー テクニカルガイド(PDF)
- コニカミノルタ フォーム印刷業界の課題と取り組み
- Lecta Eurocalco 印刷・取り扱いの推奨(元ページはリンク切れのため保存版)
- キヤノン 用紙検証情報 ノーカーボン用紙 CNN A4 60
- 公益財団法人 古紙再生促進センター 古紙標準品質規格(PDF)
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