先に印刷した紙のインキが乾く前に、重なった次の紙の裏へ移ってしまう現象のこと。紙にインキがしみ込んで透ける「裏写り」とは別の現象です。
現場ではこう使う
裏移りが心配な原稿では、「濃い黒を出したいからといって、CMYKを全部100%にする必要はありません。印刷条件に合わせたリッチブラックを使ったほうが、きれいに仕上がります」と伝えることがあります。
もう少し詳しく
裏移りは、インキが乾ききる前に紙を重ねてしまうことで起こります。単純なトラブルに見えますが、原因は色の濃さやインキ量とはっきり結びついており、データの作り方次第である程度コントロールできる現象でもあります。似た名前の「裏写り」「裏抜け」と混同されやすい点も、実務では押さえておいたほうがよいところです。
何が原因で起きるか
主な原因は、インキの盛りすぎです。 CMYKを重ねる量(総インキ量)が多いほど、インキは乾きにくくなります。総インキ量の上限は、媒体によって目安が変わります。
| 媒体 | 総インキ量の目安 |
|---|---|
| 新聞 | 約250% |
| 雑誌広告 | 約320% |
| 一般商業印刷 | 約300〜360% |
この目安を超えると、インキが十分に定着・乾燥しきらず、裏移りやブロッキングにつながりやすくなります。CMYK4色をすべて100%にする「総ベタ」や、黒を濃くするために複数の色を重ねる「リッチブラック」は、見た目以上にインキ量を使っている典型です。
紙の性質も関わります。インキを吸いにくいコート紙や、特殊な表面加工がされた紙、合成紙などは、インキが内部までしみ込みにくい分、裏移りが起きやすくなります。
どう防ぐか
防止策の基本は、インキを早く乾かすことと、紙どうしを密着させないことです。 具体的には、次のような方法が使われます。
- パウダー(微粉末)を印刷面に散布し、紙と紙のあいだにわずかな隙間を作る
- 間紙(薄紙)を挟み、紙どうしの接触そのものを避ける
- 乾燥時間を十分に確保する
- 積む枚数を区切りながら重ねていく(板取り)
- UV印刷など、瞬時に硬化するインキを使う
色の重なりの一部を黒版に置き換えて総インキ量そのものを減らす技術(UCR・下色除去)も、乾燥をよくして裏移りを防ぐ効果があります。裏移りは、印刷した直後よりも、しばらく積んでおいてから表面化することがあります。刷った瞬間がきれいに見えても油断できない、という点は覚えておく価値があります。
裏移りと裏写り(裏抜け)はどう違うか
裏移りと裏写り(裏抜け)は、名前は似ていますが原因の異なる別の現象です。 裏移りは、インキが乾く前に重ねた紙どうしで、インキが別の紙に転写されてしまう現象です。これに対して裏写り(裏抜け)は、インキが紙の内部までしみ込んでしまい、裏側から表面の絵柄が透けて見えてしまう現象です。紙が薄かったりインキを吸いやすかったりすると、インキ量が多い場面でとくに起こりやすくなります。
規格の扱いも別です。裏移りは印刷分野の規格で定義されているのに対し、裏写りは文書管理分野の規格で定義されており、管轄そのものが異なります。ただし現場では、この2つの呼び方が重なって使われることもあります。呼び方だけで判断せず、実際にどちらの現象が起きているかを確認したほうが、対策を間違えずに済みます。
裏移りが進むとどうなるか
裏移りがひどくなると、紙どうしがくっついて離れなくなる「ブロッキング」という状態に進むことがあります。 ブロッキングは、無理にはがそうとすると紙の表面がむけたり破れたりする、より進んだトラブルです。原因はどちらもインキの乾燥不足や過度な圧力によるところが共通しており、裏移りがひどくなった延長線上の現象だと位置づけられることが多いようです。
印刷が終わった瞬間だけを見て品質を判断するのではなく、乾燥・断裁・折り・製本を経て納品できる状態になるまでを含めて考える、という捉え方が現場にはあります。
関連語
パウダー(裏移り防止パウダ)/間紙(合紙)/ブロッキング/裏写り(裏抜け)/総インキ量/リッチブラック/UCR(下色除去)
参考
JIS Z 8123-3:2013(印刷技術用語-第3部:プリンティング用語)番号3026「裏移り」・番号3027「裏移り防止パウダ」/日本印刷産業連合会 印刷用語集
