版に付けたインキをいったんゴムに移し、そのゴムから紙に刷る印刷方式のこと。版と紙が直接触れないのが特徴で、いま作られている印刷物の多くがこの方式です。
もう少し詳しく
名前は工程そのものから来ています。インキを版から一度離し(off)、ゴムを介して紙に置く(set)。だから「オフセット」です。
版は、凹凸のない平らなアルミの板です。ハンコのように盛り上がった部分にインキが乗るのではありません。版の表面を化学的に処理して、インキが付く部分と付かない部分を作ります。
使うのは、水と油が反発する性質です。印刷中は「湿し水」という水を版に与え続けます。水が付いた部分には、インキが乗りません。水を使わない「水なしオフセット」もあります。
なぜ版から直接紙に刷らないのか
版が傷まないからです。
ゴム(ブランケット)が間に入るので、版と紙は触れません。版がこすれないぶん、版の傷みが少なくなります。写真や細かい文字も鮮明に出ます。高速で刷れます。いま商業印刷の主流はこの方式です。
カラー印刷では、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色を使います。版は1色につき1枚。 この版の枚数が、費用に効いてきます。
何部からオフセットが得になるか
業界で決まった部数はありません。会社によって違います。
「500部から」「1000部から」と書いている用語集もあります。それは各社の設備と価格の話です。共通の分岐点はありません。
理由は2つあります。
ひとつは版代です。 版は刷る前に作るので、1部でも1万部でも同じだけかかります。部数が増えるほど、1部あたりの版代は薄まります。
もうひとつは、刷り始めに捨てる紙です。 色と見当が合うまで、何十枚も通してから本番に入ります。現場では、1色で1回の通しに30〜70枚程度を見込みます。
この枚数を左右するのは、機械の状態・紙・絵柄です。単純な文字物で、ベタも少なく、いつも使う紙なら早く色が安定します。大きなベタや掛け合わせのグレー、人物の肌色のように色を厳密に合わせたい絵柄では、簡単にはOKを出せません。紙によっても違い、コート紙と上質紙ではインキの入り方が違ううえ、吸水性の高い紙やラフな紙は色が落ち着くまで時間がかかることがあります。特色の金・銀・蛍光色も、通常よりヤレを多く見ておきたい絵柄です。
「フルカラーなら200枚程度」という数字も、内訳は機械しだいです。4色機で一度にCMYKを刷るなら、紙を200枚通せば4色とも同時に載るので、単純に「50枚×4色」にはなりません。単色機や2色機で4色ぶんを何回かに分けて刷る場合は、色ごとに立ち上げのヤレが出るため、通す回数によって変わります。
この枚数は、部数が少なくてもほとんど変わりません。 だから部数が小さいほど、1部あたりの負担が重くなります。
少部数なら、オンデマンド印刷と見積もりを比べてください。オンデマンドは版を作りません。どこで逆転するかは、会社と仕様によって変わります。
判断の基準は部数だけではありません。サイズ・色数・用紙・片面か両面か・後加工の有無・色の再現性・納期を合わせて見ます。たとえばA4両面カラーのチラシを100〜200部ほど刷る場合、版代や段取りの比率が高くなるため、オンデマンドのほうが向くことが多くなります。一方で300部程度でも、特色を使いたい、特殊紙できれいな発色を出したい、後加工との相性を重視したいといった条件があれば、オフセットを選ぶこともあります。1,000部規模になると、多くの場合オフセットのほうが1部あたりの単価は下がります。「オンデマンドだから安い」「オフセットだから高い」ではなく、部数と条件のバランスで決まると考えてください。
「オフセット印刷=平版印刷」でよいか
実務ではそう使われます。ただし規格の言い方は違います。
日本産業規格が定めているのは「オフセット平版印刷」です。平版印刷は、画像部と非画像部が同じ平面にある版を使う印刷方法。そのなかに、版から紙へ直接刷る方式と、ゴムを介して間接に刷るオフセット方式があります。オフセットは平版印刷の一方式であって、平版印刷そのものではありません。
それでも「オフセット印刷」と言えば平版を指すのが実務です。平版のほとんどがオフセットで行われているからです。用語集の多くも、その前提で書かれています。
由来・雑学
起源は石版印刷(リトグラフ)です。1798年にドイツのゼネフェルダーが発明した、石の版で刷る平版の方法でした。水と油が反発する性質を使う点は、いまのオフセット印刷と同じです。
そこから誰がいつ紙向けのオフセットを実用化したかは、資料によって年代も国も食い違います。確かなことが言えないため、ここでは触れません。
関連語
参考
JIS Z 8123-1:2013(印刷技術用語-第1部:基本用語)/JFPI 印刷用語集(日本印刷産業連合会)
この記事は役に立ちましたか?
よろしければ、理由を教えてください(任意)
