糸や針金を使わず、背を接着剤だけで固めて綴じる製本方法のこと。背表紙ができるので、ページ数の多い冊子や、棚に並べる本に使われます。
もう少し詳しく
「無線」は電波のことではありません。線=糸や針金を使わないという意味です。
工程はこうです。折った紙の束をページ順にそろえる。背を2.5〜3mmほど切り落として、1枚ずつばらばらにする。切断面にぎざぎざの傷をつける。糊をしみ込ませて固める。表紙でくるむ。
糊はホットメルトが一般的です。PUR(ポリウレタン)系を使う場合もあります。
長所は2つあります。ページ数の制約がゆるいこと。 100ページを超えても作れます。背表紙ができること。 背にタイトルを入れられるので、棚に並べても探せます。
短所は開き方です。背が糊で固められているので、のど(中央)まで完全には開きません。のどぎりぎりに文字や写真を置くと、読めない部分が出ます。見開きで写真を使うレイアウトは、とくに注意してください。のど側には余裕をとってデザインしてください。
なぜ背を切り落とすのか
糊を紙1枚ずつに届かせるためです。
折ったままでは、折り目の内側に糊が入りません。だから背を切ってばらばらにします。さらに切断面に傷をつけて表面を荒らすと、糊の付きがよくなります。
薄い冊子でも無線綴じにできるか
背が1mm程度あればできます。ただし勧めません。
現場では1mm程度から受けています。そのかわり、次のことが起きます。開きがよくない。背が割れる。糊がはがれる。
その厚さなら、中綴じのほうが向いています。 糊が付く面積が足りないので、無理に背を作っても仕上がりが安定しません。背表紙も、名前ばかりでほとんど文字が入りません。
ここは、書いてあることが資料によって違う箇所です。 「背幅は最低でも3mm程度あるとよい」と書く用語集があります。同じ資料が、仕様によっては16ページ・背1mmでもできると書いてもいます。3mmは、できる/できないの境目ではなく、安心して勧められる目安と読むのが実際に合っています。感覚としては、背幅が2〜3mm程度出てくると無線綴じらしい仕上がりになってきます。一般的な冊子用紙なら、40〜60ページ程度以上から検討しやすくなりますが、これは紙厚しだいで前後します。
のど側の余白はどのくらい必要か
無線綴じは中綴じと違い、ページが完全に180度開きません。ノド側の余白は、最低でも10mm程度、できれば15mm前後を意識します。本文文字なら15〜20mm程度の余裕があればかなり安心です。見開き写真はとくに注意が必要で、ノドの奥まで見えないため、人物の顔や文字、重要な線を見開きの中央には置かないようにします。理想は製本方式を先に決めてからデザインすることですが、実際にはデザインが仕上がってから「これは無線綴じできますか」と相談が来ることも少なくありません。
あじろ綴じ、くるみ製本との関係
あじろ綴じは、背を切り落としません。 切り込み(スリット)を入れて、そこから糊を浸透させます。
日本産業規格は、無線綴じを糸も針金も使わずに背を接着剤で固める綴じ方として定め、背を切り落とす方式と切り落とさない方式の両方を挙げています。規格の上では、あじろ綴じも広い意味の無線綴じに含まれます。 そのうえで、背を切り落とす方式を指すことが多い、とも注記しています。実務で「無線綴じ」と言えば、たいてい後者です。
「くるみ製本」を無線綴じと同じ意味で使う用語集は多くあります。ただし規格の「くるみ」は、中身に表紙を取り付ける作業そのものを指します。綴じ方の名前ではありません。同じ言葉でも、指しているものがずれています。
関連語
参考
JIS Z 8125:2004(印刷用語-デジタル印刷)/JFPI 印刷用語集(日本印刷産業連合会)
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